バーゼルへの直行便はありませんので、まずはオランダ・スキポールへ。
隣の若い男性は日本観光の帰りでしょうか、着陸1時間ほど前になってペーパーナプキンを4つの四角に切り分けました。
何をするのかと見ていると、どうやらそれを折り紙にして鶴を折り始めた様です。一つ目は失敗に終わり、二つ目に取り掛かるところ。私は日本人、“折って見せてあげなくは”とばかり四隅もきっかりと折り上げてテーブルへ。
彼も二作目はどうやら形になり、自分のテーブルへ置きました。二つを見比べて、私はハッと感ずるものがありました。
私の折ったものは、ただの折り紙でしかないのに、彼の手からは悲哀と息づかいを感じさせる鶴が生み出された様に思えるのでした。
ツィター演奏に置き換えて考えてみても、ただテンポよく音を正確に弾いただけでは味わいがありません。
折り紙としては拙い出来栄えでも、私には思いを深くするところがあり、記念に貰って文庫本に挟んだのでした。
彼はブルーのブランケットを畳み、その上に白い鶴を一羽残して飛行機から降りて行きました。