中央広場に面したホテルに泊まりました。部屋の窓からは市電の駅、ハウプトプラッツを行き交う最新車輌、乗り降りする人々、そしてブルックナーが12年間オルガン奏者として務めた旧大聖堂を間近に臨む事が出来ます。モーツアルトは1783年に交響曲リンツを書き上げ、ベートーヴェンは交響曲第8番をリンツで完成させたと言われています。毎正時に響き渡る鐘の音が、憧れたリンツに今居る喜びを更に深めてくれるのでした。
翌朝、中央広場には朝市のパラソルの花が咲き、そのままお店に早変わりするトラックもありここリンツとしては大賑わいなのでしょう。朝市を一巡りした後、市電でドナウ対岸の丘、ペストリングベルクへ登ってみる事にしました。ドナウ川のニーベルンゲン橋を渡ってからはラック式でもない市電としてはかなりの急勾配、伊豆高原やウィーンの森を思わせる邸宅の間を約15分余り登り、終点の537m地点に着きました。山頂にはルネッサンス様式の二本の尖塔をもつ巡礼教会があります。林の途切れた所からは、ボヘミアの森やアルプスを臨む事も出来るとの事、あの方角がボヘミアかしら?ここからの眺めはリンツの市街に違いない、と、森や林を散策すること30分で、巡礼教会に着きました。この丘の麓にブルックナー音楽院の新しい校舎が建てられ、10月からそこへ移るそうなので、もしやその建物が見えはしまいかとの思いで帰路につきました。