スイスからやって来たOergeli

akkoちゃん.JPG-1スイスからやって来た 私のAkkO ちゃん

スイスの民族楽器 エルガリ(Oergeli)が今、私の練習室の椅子に置かれています。それは無邪気で溌剌とした少女が居るかの様に、部屋の雰囲気が以前より生き生きとして感ぜられるのです。

小型のボタン式アコーディオンで、普通のアコーディオンの鍵盤に当るものがボタンになっており、3列で31個、一方、蛇腹の伴奏を受け持つボタンは2列・18個並んでいます。楽器の内部は複雑かつ繊細で、全て人による手作業で作られるとか。発音体はリードで、オルガン・オーボエやクラリネット等の木管楽器・ハーモニカに共通する音色で、音量はツィターよりかなり大きく感じます。重さは3.3㎏。

昨年(2018)6月30日、日本プサルター協会創立15周年記念コンサート・パーティーが大阪で催され、ご招待いただきました。各地のプサルターグループの演奏の後、エルガリ・アルプホルン・ツィター等の演奏もあり、日常とは違った華やかで楽しいひと時でありました。そして、ひょんな事から惠藤美津子さんの美しい花の描かれたエルガリを、年内一杯、というお約束でお借りして背負って帰ると言う、予想外の帰路となったのでした。

その時ご一緒に演奏なさった先生(エルガリとアルプホルン)との個人レッスンのお約束までその場で結ぶ事が出来たのですから、道は予め用意されていたようなものなのです。

段取りがトントンと進んだお陰で7月第一週からお稽古が始まりました。今にして思えば、一年前のあの日が私にとっての一つの分岐点、木に例えるなら、やがてもう一本の枝に成長するかも知れない芽が顔をのぞかせた時と言えるでしょう。

幾つになっても新しい事を始めるのは、新学期を迎える子供の様にうきうきドキドキ、良いものです。

楽しんで弾ける様になるには、自分の楽器がどうしても必要、そこで、スイスのエルガリ製作者と太いパイプをお持ちの神戸のFさんを通して注文する事にしました。 エルガリの各部分の材質や色、彫刻など自分好みに作って貰えるそうなので、その連絡を全てF さんにお願いし、半年以上待って完成した楽器が今年(2019)4月末に届きました。注文の段階から考えていた名前がAkkO ちゃん、会話している気持で毎日練習しています。

去年のあの日に何故急に始めたいと思ったかと言いますと、この楽器、見たところも音色も大好きなスイスの野山を彷彿とさせますし、その上易しそうに思えたからなのです。 その “易しそう” の予測は既に見事外れてしまいました。楽しそうに易しそうに演奏するお三人を見、聴きした私は見事 “だまくらかされた” のでした。

始めてみて判った事、まず楽譜が読めません。譜面はエルガリのボタンの位置を示すもの。その同一ボタが蛇腹の押し・引きで音が異るため、音符がたとえ上行していても実際に出て来る音は下降していたりして、始めたばかりの私には楽譜を見てもメロディーは予測出来ないのです。今は大分呑み込めてきましたが、楽譜の示す位置を図解した紙を足元にヒラリと置き、双方を見比べてからボタンを押す、といった場合もまだあるのです。

楽器の練習は “ゆっくり” が王道と思って来ましたが、ゆっくり弾いていたのでは蛇腹の空気がすぐに足りなくなり、音が出なくなってしまいます。楽譜が示す右手のボタンの位置を素早く捉える一方、左手は蛇腹の、特に押しの場合の空気量を勘案して扱いながら伴奏ボタンを正しく押さねばならない難しさも感じます。

でも、この楽器の良さもこの一年の間に見えて来た気がしています。それはボタンの配列です。ツィターの絃の配列でも同様、これこそゲルマン民族の合理性が活かされている、と思う事もしばしばです。

さて、これからエルガリをどの様に弾きたいかと考える時、楽譜と “にらめっこ” ではなく、頭に浮かんだメロディーを即座に音に出せる様になりたいと思います。これは私には遠い道のりかも知れませんが。

ツィターやエルガリの練習、またそれらへの編・作曲に、残された人生の時間を充てられる事は、金銭では贖えない仕合せである、と心から感ずるこの頃です。

2019年7月末日  KAKO

カテゴリー: 新着情報   パーマリンク