翡翠海岸に遊ぶ

IMG_4683翡翠海岸に遊ぶ

去年の今日、1215日に富山県の朝日町、翡翠海岸へ遊びに行ったのでした。

文章は年を越してしまい、寄稿する機会を逸してしまいましたので、丁度一年後に当たる今日、コロナ禍で何処にも行けなくなってしまった昨今でもありますから、ANZの読者にも紙上の旅を、と思い、少し手を入れて纏めました。

今年は既に寒波襲来で、あちらは雪のようです。              KAKO

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ドドドーーン ザアアアーー、ドドドドーーーーン ザザザアアーーー、一晩中打ち寄せる日本海の荒波に、昨日までは砂浜だった所が今日はゴロゴロの石ころの浜に一変するそうな。歳は足せば160を超える、俄か石ころマニアの私達、地図を膝に広げ、移りゆく景色と停車駅・乗り換え駅を確かめながら“青春18切符”で1都7県、乗り換え8回、12時間かけて、伊豆からここ越中宮崎まで遥々やって来たのです。到着したのはもう真っ暗な夜でしたから、宿に落ち着ても波音ばかりで海岸の様子は解りません。明治の頃ならば、盲目の旅人“瞽女”が宿りそうな海辺の質素な宿でも晩の食卓には松葉ガニが一人一杯づつ付き、宿の女将さんの翡翠談義に明日への期待で胸が高鳴るのでした。

さて、夜が明けて、部屋の窓から海辺を見ると、釣り糸を投げている人、波打ち際を歩く人が既にチラホラ。朝の食事もそそくさと、私達も浜へ急ぐ事にしました。斬新かつ洒落た建物ヒスイテラスの手前の小さな食事処、ここの人が翡翠に詳しくてアドヴァイスが受けられる、と聞き立ち寄りました。

そもそも翡翠とはどんな色・形をしているのか、どの辺りを捜せば良いのか等、丁寧な説明が受けられ、これだけの知識を授かったのだからカケラの一つや二つ、きっと“見付けられるワイ“と勇んで浜辺に降りたのでした。浜辺には20~30cmの大きな石から拳大、更に小さなものまで様々。荒波に揉まれてどれも角がとれ丸く穏やかな表情をしているけれど翡翠は硬い故、どこか角があるとか。ほぼ30m間隔で竿を振る釣り人の邪魔にならないよう気を配りつつ、ザアアアアーーッと波が大きく引いたその数秒間、翡翠求めて歩くのです。角ばっていて透き通るような白さ、と頭で繰り返し乍ら、ひたすら波打ち際を見乍ら歩くと、時には打ち寄せる次の波に追われ,後退りして尻餅をついたり、翡翠を探すというよりは、波と戯れる一日でした。

翡翠など、そう易々と見つかる訳も無しと悟る夕刻、波に追われない足元に目をやると石は悉く角が丸みを帯び、内包物を豊かに湛えているが如く、円満な性格が伝わって来るようです。それぞれに異なる色・形・景色でもって自己を表現し主張もする、そんな石達を見ていると、まるで人間界を眺めている様な気になったものでした。

IMG_4697カワセミの異称でもあるという翡翠ではなくとも、転がっている石、それぞれに人生ならぬ、“石生”が在るかに見え、とても尊く感ぜられました。翡翠は一っつも見付けられませんでしたが縁あって手にした石達を持ち帰り、木のお盆に入れて飾ると、その石達が思いおもいの言葉でしゃべり出す気さえして、石は生きているのかと思われて来るのです。人生最後の趣味は石ころに辿り着くそうな、どうやら解かる気がするこの頃です。年明け寒波で、あの翡翠海岸も雪交じりの波しぶき、人っ子一人居ないであろう風景を思い描けるのも、青春18切符を使って老春真っ只中の女性二人、元気に旅が出来たお陰です。(2020.1.7)  KAKO

 

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