短歌の学校一年生 (16)

日に何度目頭熱くせし事か 苦を楽に換ふパラリンピアン

ほのぼのと黄色き絆のパラマラソン 虫の音珈琲感覚研ぎて

金継ぎの壺を賜ひし義姉(あね)訪るを 心設けし秋草活くる

我が庭の梅に絡むは迷惑な 他所に咲くるは崇む仙人と

よおこさん呼べばはあいと節つけて

        七十(ななそ)経てまた幼き日々が

おままごと白萩しごきて椀に盛り 幼き吾を三日月知るや

おおよくぞ花の上にて息絶えむ バッタはクモに捕らへられをり

戸を繰れば木犀の香も早々と 心騒ぎて友逝きし朝

20年来の友、稲葉さんが、雨戸を開けて早すぎる木犀の香をいぶかった6時間も前、9月12日0時27分に既に亡くなっていたのでした。

Tomyコンサートでもチケット販売に一緒に奔走し、様々なコンサート・観劇・食事・骨董市、富山県の朝日海岸に翡翠探しに青春切符で、と楽しい想い出を沢山残して下さいました。

ご冥福をお祈りして、毎日お経代わりにツィターとエルガリを奏でています。

針仕事糸は絡みてト音記号 下手の長糸夜も更けにけり

特に絹糸は絡み易く難儀します。縫い進んで糸を引く度に、ト音記号を横にした様な絡み方、短歌にするのに“ト音記号”では一音多くなる、そこで思い出したのが、昔“とじ記号”とも言った事。でも周りの誰に聞いても、『そんな言葉知らない』 と。

序にもう一つ、カスタネットを “ミハルス” と言った事。幼い頃、私の父は市販の物を買わずに、よく色々なものを作ってくれました。“ミハルス”も。大きな物では “板ピアノ” 紙に88鍵実物と寸分違わず白黒で描いて、板に貼り付け『これで練習しなさい。』と。音は勿論出ませんし、へこみもしないピアノなんて、10分も向かっては居られませんでした。どこの家庭にもピアノがある現在とは違い、70年余り前の話です。ピアノを買い与えられない親の心づくしでした。

吾独り夫の廟所へ走る道 玉紫陽花の語りかくるを

夫の最期を看取るのも独りなら、納骨も。萩・すすき・玉紫陽花・ホトトギス秋草の咲き乱れる県道を走り抜け、対向車とて殆ど出会わず、天国に送るに相応しい道中でした。

 生きていると色々の事が起きますが、それを味わっていると短歌   (うた)ができるのです。

今の所、元気に楽しく暮らして居ます。

お読み下さり、有り難く存じます。

      令和3年長月25日 歌人 野の花

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