父の手で化粧されたるバイエルに 我が音楽の原点を見る

秋雨に非あるは吾と知りてより 不明を恥じつ眠れなき夜
白嫁菜群生すとふ遠笠の 原生林に明らけく咲く

エルガリの蛇腹の動き目いっぱい 気に病む吾を呵々大笑す
掌に銀の真珠集めむと むかごの眼鏡かけて散歩す
車停め遠慮がちなる声掛けらるる 「置いてきましょうそのゴミ袋」
アサギマダラゆらりゆらりと舞い降りし 藤袴の園遠き道程

われ八十路ツーシーターのスポーツカー 屋根開くるたび気の若返る
ソリストのこの日の為のカデンツに 聴き手招かる平和のシェルター
幸福を二匹の猫に分け名付く われ真っ先に貰いし幸福

令和4年神無月25日 うた人野の花