チターという楽器

チターの歴史と、チターという楽器の紹介です。

チター(ツィター)という楽器は、オーストリア・ドイツ・スイス等ドイツ語圏を中心に弾かれているチロル地方の民族楽器です。共鳴する木の箱の上に5本のメロディー弦と30本以上の伴奏弦を横に張り、メロディー弦を右手の親指にはめた金属製の爪(リングとかピックとかプレクトラムと呼びます)で弾き、残りの右の指で伴奏弦を弾いて音を出します。左手は、メロディー弦のフレットを押さえて音程を変えます。下の画像はハーフェンチター(ハープ型チター)です。

チターの紹介

チターに似た楽器は世界中に発達しており、中近東のカヌーン・チャイナの琴・フィンランドのカンテレ・日本の箏もチターの仲間です。

西洋の楽語辞典では、日本の箏をジャパニーズチターと表していますが、逆に日本からみると、チロル箏という事になるでしょうか。チターはドイツ語ではZitherと表記されますが、これはもともとドイツ語にはなく、ギリシャ語のKithara(キターラ)という言葉が変化したものではないかと言われています。古代オリエントで羊の腸を乾燥させて弦として使用したものがチター等の楽器の発祥ではないかと言われていますが、諸説があり、まだはっきりとはしていません。

現在、使用されているチターの原形はScheitholt(シャイトホルト)という中世に演奏されていた楽器で、長方形の箱に弦を2、3本張っただけの単純な構造でした。そんなチターは19世紀になると急速な発達をみせます。19世紀に起こったヨーロッパロマン主義による自然回帰の運動により、人々はアルプスやバイエルン地方の豊かな自然に触れるようになり、チターもこの地方の民族楽器として知られるようになりました。次第にギターやヴァイオリン製作に携る工房もチターの製作を初め、バイエルン王国のマックス大公は、チターの名手で、その製作改良にも多大な貢献をし、現在のような麗しい音色を発する楽器へと発達していきました。マックス大公の娘でオーストリア皇后となったエリザヴェートもまたチターをこよなく愛した一人です。心を病んでいたエリザヴェートは宮殿の部屋で一人チターの美しい音色に耳を傾けていたといいます。

現在、演奏されているチターには4つの音域の違うものがあります。音域の高い順に、クウィントチター、ディスカントチター、アルトチター、バスチターの4種類です。この中で、主に演奏されているのはディスカントチターで、5オクターブ半の音域を奏でる事ができます。下の画像のように、チターはチター用の共鳴テーブルに載せて演奏します。共鳴テーブルも楽器の一部と考えられています。

演奏風景

チターの曲で有名なものは、何と言っても映画「第三の男」のハリー・ライムのテーマです。日本では某ビール会社のCMにも使われていますよね。この曲はウィーンのチター奏者アントン・カラスの作曲ですが、他にもチターの名曲はたくさんあります。また、演奏するジャンルもレントラー・ワルツ・ポルカ等の民謡をはじめバロックやルネサンス期の音楽、クラッシックから現代音楽・ジャズ・ポップスまで多岐にわたります。

日本ではまだまだなじみの少ない楽器ですが、チロル地方のメロディーと伴奏が一緒に弾ける箏やハープと思っていただければいかがでしょうか。その麗しい音色はきっとあなたの心に響く事でしょう。

gbvy[Wɖ߂