箱根 岡田美術館へ(Kako)

箱根へ向かう伊豆スカイラインは、木々の柔らかな緑色の中、水木、うつぎ等白い花が方々に咲き、所々に山つつじの朱色がアクセントとなって目も覚めるよう。、
行き交う車はごく少なく、実に美しく快適な道路です。
お天気は、下り坂との予報ながら、カーヴを曲がる度に富士山が見え、まるで“お富士さん”と会話している様なドライヴでした。

遠くのあの白い花はニワトコでしょうか、ニワトコは西洋名を“Holunder”といい赤く実った果実からお酒が出来るそうで、小さなリキュールグラスに注いで大事に嗜んでいらしたシュラー さん。
1990年代後半、当時70歳代でツィターオーケストラの指揮でした。惠藤美津子さんと私はミュンヘンの宿舎を提供して頂いたり、クナーブルのお家やヴュンシェ工房をご一緒にお訪ねするなど、大層お世話になった事を懐かしく思い出しながら走っていましたら、やがて車は“音の出る道”に差し掛かりました。

ここを走ると、しばらくの間、文部省唱歌“富士の山”のメロディーが聞こえるとの事で。
耳を澄ますと確かに聞こえはしますが低く唸る様な音で、まだまだ改良の余地あり、の感しきりでした。もう少し速度を上げて走れば良かったのかも知れませんが。音の出る道 を試したかった為、芦ノ湖を一周することになり美術館にはかなりの遠回りでした。

岡田美術館は昨秋会館したばかりで、主に近世・近代の日本・中国・韓国の美術品を収蔵、公開しています。今は歌麿の肉筆画、“深川の雪”を公開展示している為それに特別の関心を抱いて人々が詰めかけているようです。

この、肉筆浮世絵は深川の雪・品川の月・吉原の花からなる三部作ですが、昭和23年に東京銀座で深川の雪だけが三日間公開された後、その所在は不明となっていたものだそうです。品川の月・吉原の花は現在、共にアメリカにあるとか。

昨年3月、66年ぶり“世紀の大発見”として大きく報道され、その後修復を経て岡田美術館に所蔵される事となったものだそうで、縦2m、横3,5mという誠に大きな掛け軸画なのです。遊郭の女性たちが実に精緻にまた美しい色彩、確かな筆致で描かれています。でもなぜか男の人は一人も居ないのです。その他には北斎・松園などの美人画軸物や屏風、巻物も多く展示されていました。工芸品では、古九谷や柿右衛門など、私の家の陶器だってこういう所に飾ればそれらしく見えるのに!と勝手なことを思いながら、親しみを持って眺めたのでした。

深川の雪 だけは時間を掛けて見ましたけれど、他のものは、ただ見て通り過ぎただ
け。自分一人なら、もう少し丹念に見たでしょうけれど、、、。入館料が2,800円もするのに、“それでは勿体ない”なんて思わない人と一緒に行ったものですから館内に居たのはたった一時間でした。
音楽のコンサートでも、特に聴きたい曲があれば、それだけを聴ければ満足、という事がありますね。この度の“深川の雪”は、そういった一作だったようです。

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