お花見の集い

2001年から毎年4月15日、と決めて開いているお花見の集い、今年の様子をお伝えしましょう。

神様は何処に?私の中よ!と普段は思っていますのに、今年のこの日ばかりはお客様一人ひとりが神様に思えました。

予報では朝から雨、しかも雷雨や東からの強風もとされていましたのに、起きてみるとどうでしょう、一面の青空。“良い行いの人が良い天気を連れてくる”と言う訳で、お客様こそ神様に思えたのです。

普段暮らしている部屋、TV.・PCと周辺機器、テーブル・サイドボード・本・飾り棚、いろんな物がごちゃごちゃとある全てを文字通り納戸に納め、踏み台に二枚の板を渡して作ったベンチが客席です。お昼には今まで腰を下ろしていたクッションを降ろし、ベンチの板を寄せてテーブルクロスを掛ければ大きな食卓に早変わり。これは素晴らしいアイデアでしょ。

お客様は21名、その約半数が東京方面から。初参加の友、それは国立時代の仲良しで、私が山口に暮らしていた頃彼女は名古屋で、新幹線名古屋駅のホームで乗り継ぎ時間を利用してデートした事もありました。それ以来ですから一体何年ぶりとなるのでしょうか。彼女は去年お仕事を退き、自由の身になったので、、、と言って参加。打合せのため電話で一言話しただけで、忽ちにして学生時代の親しさに戻れたのでした。

演奏は11時から。まずアルプホルンでファンファーレを、次に二部に分かれて二曲、次は小谷野さんのソロで一曲、こうしてミニコンサートが始まりました。ツィターで小曲を三曲演奏の後、義太夫。正式に裃を着けるのでその待ち時間にちょっとお話しを。

仙台のフルートを吹く友の義母様、この4月始めに百歳と半年でとうとう天国へ。なんとも爽やかでお見事な人生の幕引き、残される者へも溢れる思いやりと感謝の気持ちを生前に遺し、惚けることなく穏やかに永遠の眠りにおつきになったのでした。フルートの友ご夫妻が何くれとなく心を配り、その支えあっての百歳でありますが、ここ一年、どの様な日常をお過ごしなさったのかは、実の娘で歌人の美沙子さんの素晴らしいお歌がよく物語っておりました。

その中から三首紹介させて頂きましたので、ANZ読者の皆様にも同様に味わって頂きたく思い、ここに書き記します。

淡々と母は迎ふる百歳をおごることなく嘆くことなく

乙女座と母の星座を知りしより百歳の乙女と思ひてをかし

さくら見る母も私も笑顔なり「今年のさくらがいちばんきれい」

お客様は一様に深く心打たれ、そこでご冥福をお祈りしたのでした。

やがて義太夫のお支度が整い、裃を付けて語り始めたのは、歌舞伎でも有名な英彦山権現誓いの助太刀より、“毛谷村の段”、幼い女の子とお侍を見事に演じ、語り分けたのは成田丈、玄人はだしの15分間でした。

次のツィター演奏、トラウン湖の夕暮れ、これはいかにもツィター曲らしく、実に素直で決して弾き難いものではありませんのに、練習不足から完成には至らず、残念な出来でした。

冬山の険しい姿を湖に写す美しいトラウン湖をこの二月に実際に見て来たため、どうしても弾きたかったのです。もっともっと練習して、9月のANZのコンサートには、もう少しましな美しいトラウン湖を皆様にお聴き頂ける様にしたいと思っております。

次の出し物は“あかいと”という題の朗読。読み手は国立時代の同級生。

落語に出て来る様な長屋を舞台に繰り広げられるお話しで、登場人物はさまざま、それを見事に語り分け、聴き手からは始終笑い声が。“あかいと”が結ぶ縁、目出度しめでたしで終わるのでした。

最後はまたツィターで、“通りゃんせ”ソロの最新版。ラーキルヘンでクレンスレーナーと二人で弾いたものをソロに直したため、たった2小節ですが少し難しい箇所が有るために、全体の流れをどう持って行くかなどに工夫が必要でした。これもまだ自分のものにはなり切っていないという思いが残りましたが曲は人前で弾いて初めて完成するものですから、今回が絶好の機会であった事も確かです。

ツィター演奏は5曲、この日の為に毎日まじめに練習を重ねましたのに、思い描く演奏が出来ませんでした。過日、ガーデンテーブルとベンチの“組立奮闘記”をお読み頂きましたけれど、そんなものの比ではないのです。

ツィターで一曲弾くのが私にはどれ程の大仕事であるか、改めて思い知らされたのでした。

八重桜はまだ三分咲き、夢と希望そして可能性をも感じさせ未来がある八重桜、一方、人間の私は、、、、、、、?    “おごらず嘆かず淡々と!”そうです、美沙子さんのお歌を指針としましょう。するとどうでしょう、今年もこの集まりを持てた事が嬉しく有難く、さらに喜びが深い所から湧き上がって来たのです。

お客様も桜を眺め、庭を歩き草花を愛で、いろいろのプログラムを楽しみ、ワインで乾杯の後のお食事、おしゃべりと笑いでどうやら愉しい一日をお過ごし頂けたようでした。

努力と精進と感謝の日々で、来年もこのお花見の集いが持てます様に祈りつつ。

音の森サロン 森 和子 (KAKO)

 

カテゴリー: 新着情報   パーマリンク