短歌の學校一年生(27)

黄揚羽の羽化は命の神秘なり輝く生を全うせよと

     (写真 大辻一徳)

嵐去り羽化見届けし早天の青きみ空にキアゲハの黄

汗びしょで屋に上がり来てまず西瓜至福の時を貪り食みぬ

「チン」と言えば電子レンジの事だった去年までの平和懐かし

組み立てしベッドに腰掛け言ってみる

        「ハンパない達成感」と若者言葉で

年古りて樹々の繁れる山神社蜩聞きつ独りブランコ

蜩やカナカナカナとひたすらに思いの全て二音に籠めて

待ち居れば小室の裾に昇りたり今宵の月は空赤く染む

     (写真 石原和子)

今日の月まだ明るみの残る空頬赤く染め「かぐや」里帰り

路地裏で扇使いはプロの所作ヘボの楽しむ縁台将棋

コオロギの通奏低音いや増してエルガリ弾けば小屋沸き返る

むかご飯「これは旨い」と刷り込まる幼き頃の父の一言

銀の粒母の好みし零余子飯 鮎・茄子焼きて供えし仏前

ドイツにも萩の咲くとふ便りあり零れる花のいろはにほへと

     (写真 石原和子)

白萩に誘われ開くる柴折戸を潜れば万葉歌の世界に

溢るる湯渡り来る風ひんやりと心の半分夏を惜しみぬ

朝帰りボクのお仕事招き猫露にまみれし耳身繕い

ツィター弾くこれ日課なり朝なれば清しき空気振るわす調絃

わがツィター大事な聴き手ノラ一匹いつにも増してなぜか緊張

問いかけに「生まれつきよ」と微笑むる我が百歳の母を誇らし

                      (友に替わりて)

令和4年長月25日 うた人 野の花

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