セミナー報告 (6) Tegern-See へ

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ツィターのどの様な道を歩みたいのか、歩むのか、まだ右も左もよく解らない時分に、彼の楽器に出逢い、木彫部分やメカニックのグラフィールの素晴らしさ、また、このハスリンガーツィターで難しい曲をいとも簡単に弾いてしまうR.Konow の演奏にも(その当時は)惹かれ、是非とも、とお願いして私の為の一台を作ってもらったのでした。

依頼したのが1997年、完成が1999年、そして前に“報告(2)”にも書きました様に、2000年のWasserburg でロイブルさんを紹介してくれた“ある人” もこのハスリンガー なのです。彼の楽器の真骨頂は、アンプを内蔵したE.Zither で、仕事としてホテル等で弾く人達に評判が高い楽器です。

その後、彼は絃の会社OPTIMA の経営者となり、私もツィターの絃で便宜を計らってもらったりしたものでした。5年程前から、その会社を他の人に譲り、現在はまた楽器制作に精を出しているようです。

歴史的価値のあるもの、珍しいもの、細工が特に凝って美しいものなど、約250台ものツィターが、工房隣のサロンと地下室に収蔵されているそうで、やがて展示室を整えるつもり、と張り切って話してくれました。IMG_3161.JPG-1

1999年には彼がミュンヘンのツィター弾き4名を引き連れて来日し、伊東でコンサートを開いたことがありました。当時、伊東ではツィターが珍しい楽器でしたので、昼夜二回公演し、補助席を出す程の盛会で、大好評裡に終える事が出来たのですが、これも遠い昔話となりました。その夜ツィター演奏があるというTegern-See への車中で、私の知っている人達の消息についてハスリンガーに尋ねてみると、ヨーデルのB.Erhardt はとっくに亡くなり、Heitvogel は何処やらよその土地に暮らしている由。

IMG_3163.JPG-1来日した4名のツィター奏者の中で一番の若手だった、R.Konow 、 彼はデザイン関連の仕事とツィター演奏の二本立ては変わらず、この日は自分の演奏契約の場ではないけれど、暫くぶりにKAKO が来たというので、Tegern-See まで駆けつけてくれました。

K.Hornfeck, この人は当時、ミュンヘン郊外のシーメンス社の技術者で、趣味でツィターを弾いていたようです。”von Karl” としてファイルが拵えてあるほど彼から楽譜を頂きましたが、改めてお礼を申し上げる機会もないまま、惜しいことに今年4月に亡くなったそうです。

惠藤美津子さん、水谷好子さんと三人、あのシュラー氏(鉛筆を長さ順に並べて立てる)の車で、お住まいを訪ねた事もありました。

玄関を入ったロビーに美しい絵が描かれた民族家具がデンと置いてあったこと、テーブルクロースや装飾品が一つ一つ素晴らしかった事を思い出します。

Neubauer, この人は、オーストリアのチロルから一緒に来日したのでしたが、数年前に亡くなったようで、今は息子さんがツィターの世界でかなり名高く、活躍しておられます。

来日した4人の内の残る一人はスポーツ関連の医師で、彼は健在、今も余暇をツィターに充てている様だけれど、行き来は途絶えたとの事。

ドイツでは、働き方、考え方が日本の今までとは随分違う部分があり、かなりの人が二つの仕事を両立させているようです。

夏の日照時間が長い事も影響しているのかも知れません。もっとも、冬は夜が長く、朝7時はまだ暗闇です。それでも寒く暗い早朝から、人々は働き始めます。日本人も勤勉ですがドイツ人は更に徹底して勤勉な人種に私には思えます。Tegern-See はミュンヘンから車で高速を走って約1時間、湖の向こう側とこちら側では町の名も違う大きな湖です。到着したホテルは鬱蒼とした大木の森の向こうに湖が望める広大な庭園を持ち、食堂ではツィター弾き、M.Noehmeier が夜7時から演奏を始めます。私達はその前に食事を済ませ、演奏テーブルの一角に陣取りました。

この様な食事の場では、人々の邪魔にならない様、食事時の心地良い雰囲気を醸し出す音が大切なので、明るく穏やかで耳からスッと抜けて行くような曲が相応しいようです。

R.Knabl,  J.Haustein, G.Freundorfer, W.Hintermeyer,等、ミュンヘンゆかりの作品と数々の民謡を演奏してくれました。その中で、新しく耳に止まった曲は、Tegernsee-Walzer でした。いつも、自分が弾くなら、、、というフィルターをかけて聴いてしまうので、技巧を要する曲、速い曲はパス。 この曲は楽譜も無い民謡のようで、私が弾く機会が巡って来るものやら、今のところ分かりません。

Konow と時々奏者交代、彼は相変らず技巧を全面に出す早い曲が好きで、”ヴィンクルモースの牧場で“や太鼓のマーチ”などをこれでもか、と、聴き取れない程の速さで弾き飛ばしていました。

7月11日  KAKO

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