横手山冒険記 (2/3)

横手山の夜明け -1横手山の夜明け

いよいよヒュッテの前庭で演奏する朝を迎えました。

コロナ対策で、四人部屋に一人で休んだ夜明け、カーテンを開けると見事な暁光に、晴天を約束された気になったものでしたが、朝食の頃になると、霧や雲が刻々と山を覆い、暫く経つとまた晴れる、山の天気の激しい変化にはビックリ。

 

 

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 霧や雲の様子が刻刻と変わりゆく

5回予定されているステージの1回目は9時45分から。

広い草原にはキスゲや赤つめ草、真っ白でエーデルヴァイスの仲間のヤマハハコなど、様々な花が色濃く咲き群れ、懐かしいオーストリア・ツァイレルンに似た野原。

-1 トモエシオガマ

 ヤマハハコIMG_5430-1

ここでの練習はOK、との事で、遠慮しつつも音を出していると、『これは何という楽器ですか?』と若い女性が話し掛けて来ました。

「スイスの民族楽器で、“エルガリ”と言って、、、、。」と、同一ボタンでも蛇腹の押し引きによって異なる音が出る事や、譜面についても説明すると、彼女は興味深そうになおも質問してきます。子供の頃アコーディオンも弾いた事があるし、今はピアノも、と、とても音楽好きな様子。

30分後に始める一回目の演奏を待たず山を下りなければならない、という彼女の為に、“エーデルヴァイス”を弾いて聴いてもらったのでした。

この曲だけは、トラブルのある6番ボタンを使わずに伴奏を入れて弾けるので、「どんな音がするのか試しに、、、。」と言って。

この出逢いを殊の外喜んだ彼女は感激の余り、コロナウイルスの事などすっかり忘れて握手の手を差し伸べます。私も嬉しくて、しっかりと手を握ったものでした。

 2300mという高所、横手山山頂でも一通りのコロナ対策は取られており、人々も私達もマスクをつけ、距離を取っての演奏です。でも心動かされた時など、どうしても自然に手を握り合う場面も生まれます。本来それは自然で美しいものですのに、これから先、人と人の関わり方はどの様に変って行くのでしょうか?

 

 4人のメンバーをここで紹介しましょう。

黒一点は鍵盤アコーディオンの先生 ・      アマチュア・ヴェテランの鍵盤アコーディオン弾き   ・   3人目は、今回はエルガリとボタン・アコーディオンを弾き分ける私の先生。そしてエルガリ初心者の私の4名。

 第一回目のステージ

霧が薄くたなびいて涼しく、演奏には有難いお天気、全員での演奏曲、

まずは *雪のワルツ から。

この曲はツィターでも好んで弾かれるもの。

次いで *De Hobby-Senn (何と訳す?)

3曲目 *エーデルヴァイス

これはツィター用に私が編曲したものを応用

4・5・6は二台のアコーディオンとボタン・アコーディオンあるいはエルガリ。

 1ステージ約30分の演奏途中で霧が俄かに濃くなり、やがて霧雨が。私達4名おお急ぎで楽器・譜面台を撤収。建物内に避難して天候回復を待つ事20分。やがて霧雨も止み、薄く太陽光が。楽器・譜面台・椅子を再度セッティングして、続きを演奏。

全員での演奏曲目は他に

*Chumm mit uf d’Bärge ue (山へ登ろう)

*Wir fahren mit der SBB (スイス鉄道で行こうよ)

*Das Kiufsteiner Lied (クフシュタインの歌)

(天に召された打越さんに、以前ツィター用に編曲して差し上げ、次回のmeeting でツィター・エルガリそれぞれに弾いて楽しむ事になっていたのですが、心残りです。)

*Wohnwagen-Plausch ( 楽しいキャンピングカー)

*Tiroler Holzhacker Buaben (チロルの木こりのマーチ)

(これもツィターでよく演奏される曲)

鍵盤アコーディオンとボタン式アコーディオンあるいはエルガリの3台で

*Am Markt Samstag (土曜の市場で)

*Zillertaller Hochzeit (ツィラー谷での結婚式)

 鍵盤式・ボタン式のアコーディオン二台で演奏された曲

*Retour des Hirondelles (つばめ)を聴いて、

燕が巣の雛たちの為に餌を採りに飛び立って行く、餌を咥えて勇んで巣に戻って来る様、宙返りを彷彿とさせるとてもテンポの速い曲。

鍵盤アコーディオンはその速いパッセージを弾く為に、指でキーを打つのではなく、グリッと手全体を捻って音を出す、速いから拍子の区切りを合わせるには、時間的余裕があり、ボタン式アコーディオンとも拍子の帳尻はピタッと合うのだけれど、中の細かい音は団子状になり、独立した一音づつとしては聴き分け難い。

ボタン式アコーディオンでは早いパッセージも細かく弾くから、一音一音が等しく配分され、ちゃんと聴き取れる。この二台が合奏すると、ほんの少しのずれを感じてしまう。

ツィター演奏でも、ヨーロッパのホテルなどで演奏している人が、速く弾き飛ばす場合があり、それと同じ事ではないのか、と思うのだけれど、アコーディオンにはそれ特有のテクニックがある、との“黒一点”のお話に、何も知らない私の所見は間違っているのかも知れない。速い曲でも音が独立して鮮明に聴き分けられる方が、自分の好みには断然適っている、と感じた出来事でした。あのグリッと捻る奏法をエルガリの上でしたならば、忽ち楽器がトラブルを起こすでしょう。

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記念に一人だけで写してもらいました

3ステージ目のある時、雲間から太陽光線が射し、“天使の梯子”が五本も降りて来た瞬間がありました。今日は旧盆の入りの日でもあるし、迎え火もお墓参りもそっちのけでここへ来てしまった私、天国の家族が導かれて梯子を降りて来たかのように思え、会話するような気分で演奏したのでした。

 お昼頃、4ステージ目に空が急に掻き曇り、大粒の雨が降り出しました。野外で思いおもいに過ごしていた登山者や私達、皆建物に避難。やがて雨足は弱まったものの、演奏は無理。天候回復にはまだ時間を要するでしょう。そこで、私だけ終了とさせて貰い、仲間に見送られて長野県側へ出発。

 今回貴重な体験をさせて頂けて、これを確かなものとしなくてはなりません。

レパートリーは増やさず同じ曲で充分。更に磨きを掛けて、自信を持って弾けるようにして、また来年もここ横手山に来たいもの、と思いました。

一年後も長い道中のこの暑さに耐えられるか自信は無いけれど、ルートも二度目となると、ずっと気が楽、演奏とここまでの運転に対して ”冒険“ 等という表現は、もうしなくて大丈夫でしょう。

残ったた三人は、天気の安定を待ち、8曲程演奏して締めくくりとし、聴き手も自分たちも双方満足の後、山を下ったそうです。

よかった良かった!

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